松本穂香さんの言葉から、真面目さが時に重荷になることを認識しました。彼女が直面した感情は、多くの人にとって共鳴する部分があるのではないでしょうか。名優との出会いを通じて、私たちも新たな視点を得ることができるかもしれません。

 数々の映画やドラマに出演している女優の松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが、名優ヒュー・グラントがサイコキラーを演じる脱出サイコスリラー『異端者の家』について語ります。


◆若いシスター2人を待ち受けていた異質な恐怖



松本穂香さん



 今回、わたしがご紹介させていただくのはヒュー・グラント主演映画『異端者の家』です。


 雨の中、布教のために家々を回る若いシスター2人が向かったのは、森に囲まれた小さな一軒家。出迎えてくれた男性、リードの気さくさと、中に妻がいるという言葉に安心し、家の中に入ってしまう2人。


 しかし、徐々に増すリードへの不信感、そして一向に現れない彼の妻。不安と混乱が増していくなかで、彼女たちを待っていたものとは……。


◆とにかくよく喋るサイコキラー



『異端者の家』より(以下同)



 A24×サイコスリラーということで、飛びついて観させていただきました


『異端者の家』というだけあって、本当にその通り、ヒュー・グラント演じるリードの異端者っぷりが強烈でした。


 拷問だったり暴力だったり、比較的わかりやすい(映画でよく描かれる)異端さではなく、正直観たあとも「???」が残るリードの思考回路。異端者リードは、とにかくよく喋ります。


◆人間らしい部分をますますかき乱される



 沈黙でわからせてくるタイプのサイコキラーではなく、自論をまくし立て、混乱させてくるタイプ。喋る調子も小気味がよくって、ずっと聞いていられそうなんだけど、真面目に受け止め続けると頭がおかしくなりそうな内容ばかり。


 だったんですけど、最終的に明らかになるリードの物凄く人間らしい部分を見させられ、ますます頭の中をかき乱される思いでした。


 どういう気持ちになればいいのかわからないという謎の感情。「いっぱい語ったわりにそこかよ~!!」という人間らしさを鼻で笑えばいいのか、そう思わされたこと自体も映画の道順通りに私が進んだ結果だったのか。


理解できないほど恐ろしいのに魅力的



 う~ん、あんまり潜りすぎると戻ってこれなさそうなので、こういう映画は俯瞰で楽しむのが一番ですね!


 とにかく、ワンカットワンカットが恐ろしく、それを演じきったヒュー・グラントが素晴らしかったです。


 理解できなければできないほど恐ろしく、その分魅力も感じてしまう不思議なジャンル、サイコスリラー。また、素晴らしいサイコキラーに出会えてハッピーです。皆さまも、ぜひ映画館で!


●『異端者の家
配給/ハピネットファントム・スタジオ TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中 ⓒ2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.


<文/松本穂香


松本穂香1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。2017年連続テレビ小説ひよっこ』に出演して注目を集め、2018年にはTBS日曜劇場この世界の片隅に』で主演に抜擢。2023年、映画『“それ”がいる森』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2024年10月期月9ドラマ『嘘解きレトリック』では鈴鹿央士とともにW主演を務めた



松本穂香さん


(出典 news.nicovideo.jp)