細かく見ると、そうなるのか。

 テレビアニメサザエさん」(フジテレビ系列)で現在使われているオープニング曲は、放送初期のバージョンとは違う“不可解な改変”がある――。主題歌を詳細に分析し続けている人のツイートに「知らなかった!」と驚きの声が寄せられています。誰もが知る国民的アニメにそんな秘密があったとは……。

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 分析を行ったのは、エンジニアBGM研究をしている祥太さん。まず1つ目の違いとして、現在のオープニング曲では最後の「今日もいい天気~♪」の後に「0.6半音」下がる“中途半端な転調”が入っているのですが、実はこれは初期のテレビ版にはなく、70年代のある時期から突然こうなったものなのだそうです。

 この“中途半端な転調”については以前から、祥太さんをはじめ一部のファンの間では知られており、祥太さんも2015年ツイートで指摘しています。現行バージョンと旧テレビ版を聞き比べてみると、確かに旧テレビ版は「今日もいい天気~♪」の後で音が下がっておらず、現在のバージョンよりも少し明るい印象に聞こえます。

 そして今回、祥太さんが新たに指摘したのは「最後だけでなく、曲全体も音程(ピッチ)が少し低い」という点。曲の音程を可視化できる音楽プレーヤーPSOFT Audio Player」で比較したところ、現在放送されているオープニング曲は、旧テレビ版に比べて曲全体が「0.3半音低い」ことが分かったのだそうです。

 つまり総合すると、現在のオープニング曲では「全体のピッチが0.3半音低く、さらに『今日もいい天気~♪』の後で0.6半音下がる“謎の転調”も入る」という不可解な改変が行われていることになります。祥太さんもツイートで「もはや正しいのは現在は使用されてない初代TVサイズ音源だけ」とコメントしていたように、「本来の部分」はもはや1ミリも残っていないという状態。一体どうしてこんなことに……?

 祥太さんによると、実はサザエさんオープニング曲は1969年の放送開始から半年ほどで尺が現在の長さに変更されており(当初は約60秒→現在は90秒)、それに伴って主題歌の音源も差し替えられているとのこと。このとき新しく作られた音源について、祥太さんは「レコード用の音源をベースにしつつ、最後の部分だけ旧TV用音源をつないで作ったもの」と推測。レコード用音源でも同じように音程を確認してみると、やはり全体が0.3半音低く、これがベースになっているため現オープニングも全体が0.3半音低くなってしまったのではと結論付けています。

 ちなみに、もう一つの謎である「最後の謎転調」についてですが、こちらは祥太さんにもいまだに変更の原因や意図は分かっていないとのこと。あの「謎転調」以降がまさに旧TV用音源を継ぎ足した部分なのですが、そもそも旧TV用音源を使っているならレコード版より音が「高くなる」はず。それなのに、なぜか継ぎ足した部分では「0.6半音下がってしまっている」というのも不可解なところです。単に録音時のミスだったのか、それとも何か別の意図があったのか……。

 編集部はこの件について、サザエさんアニメ制作を手掛けるエイケンにも問い合わせてみました。しかし戻ってきたのは「担当者に確認したところ、当時の状況を知る人間がもうおりませんので、お答えすることができません」との回答。残念ながら真相にたどり着くことはできませんでした。

 祥太さんによる一連のツイートは広く拡散され、「ずっと違和感を覚えながら『ひねった編曲だな』と思っていた」「音源が古くて劣化したのかと思っていた」「あの違和感に正体があったとは」などと話題に。転調の原因や効果についても、「尺合わせのために音を伸ばした結果では」「そもそも尺を伸ばさないほうが音と動きが完全に一致する」(※オープニングの最後、サザエさん一家ジャンプするタイミングが曲のテンポと微妙にズレている)など、さまざまな意見が寄せられています。

 祥太さんは併せて、全体のピッチを修正し、さらに転調部分にも補正をかけ、本来の音程に整えた「真・サザエさんOP」バージョンも制作。「耳慣れたメロディが、補正で底抜けに明るくなった!」「子どものころからのモヤモヤが晴れた」とこちらも好評を博しています。

あの転調には、実はさまざまな要因が……(画像はAmazon.co.jpより)


(出典 news.nicovideo.jp)