ゴールデン進出

総勢18組の若手お笑い芸人ショートネタバトルを繰り広げる「カーネクストpresents オールザッツ漫才 真夏のゴールデンSP」が、8月17日(水)に放送される(夜8:00-9:57、MBS※関西ローカルTVerGYAO!MBS動画イズムにて見逃し配信)。1990年から毎年放送されているお笑い長寿番組が初のゴールデンタイム進出。見どころをエンタメライターの苫とり子が解説する。

【写真】2011年のフレッシュなかまいたち

■“お笑い界のパリコレ”?番組名物はネタバトル

関西の“年末風物詩”として知られる「オールザッツ漫才」は、毎年12月29日の深夜から約5時間にわたって、大阪・茶屋町のスタジオより生放送されている大型ネタ特番だ。

お茶の間を賑わしている人気芸人から、お笑いレース常連コンビ、テレビ初出演となる超新人まで、“今”を象徴するよしもと芸人が総出演。「この番組を見ていれば、今の関西の笑いが分かる」と言われ、熱烈なお笑いファンや業界人からも注目されてきた。

毎年変動は見られるが、基本的に番組は中堅芸人による「ネタ披露」と、若手芸人「ネタバトル」(主に「フットカットバトル」と呼ばれる)の二軸で構成されている。

特に番組名物となっている後者のネタバトルでは、オーディションを勝ち抜いた芸人たちが渾身のショートネタ(ピンネタ・漫才・コントなんでもあり!)を披露。観覧客によるスタジオ投票や、Twitterを用いた視聴者投票などで、獲得点数の多い芸人が準決勝、決勝と勝ち残っていき、最終的にその年の優勝者が選ばれる。

優勝したらブレイク必至と言われており、過去には、シャンプーハットケンドーコバヤシ笑い飯とろサーモンジャルジャル、藤崎マーケット、アインシュタイン、粗品(霜降り明星)、和牛、見取り図など、名だたる芸人たちを輩出。

様々な番組に出演が決まったり、この勢いにのって著名な賞レースで優勝、もしくはファイナリストに進出したりと、売れっ子芸人への足がかりとなっている。視聴者側もいち早く売れる芸人をチェックできるという意味では、“お笑い界のパリコレ”ともいえるかもしれない。

■若手から中堅、ベテランへ。世代交代していく芸人たち

一方、すでに全国のお茶の間でおなじみの芸人たちによる「ネタ披露」パートも見逃せない。例えば2021年度は、見取り図、ロングコートダディニッポンの社長、ZAZY、濱田祐太郎、令和喜多みな実、コウテイら、「M-1グランプリ」「R-1グランプリ」「ABCお笑いグランプリ」「上方漫才大賞」「THE W」といった賞レースで結果を残した者たちが集った。

さすがのネタの完成度に驚かされるとともに、彼らもかつては番組のネタバトル出場者だったパターンが多く、スタジオで若手芸人の姿を温かく見守る光景も感慨深い。

2018年には、司会も長年の功労者だった千原ジュニア・小籔千豊から、かつてフットバトルしのぎを削った“アキナ牛シュタイン”(アキナ・和牛・アインシュタイン)にバトンタッチ。そうした“お笑い世代交代”の場に立ち会えるのも、「オールザッツ漫才」の醍醐味だ。

ちなみに「オールザッツ漫才 真夏のゴールデンSP」の放送に先立ち、Tverでは現在、2011年2021年の「オールザッツ漫才」が無料配信中。間に10年の月日が流れており、それを観るだけでもお笑いシーンの変容ぶりを肌で感じることができる。

特に、千鳥とかまいたちの若かりし姿を拝める2011年の「オールザッツ漫才」は必見だ。今やMCとして、若手芸人をまとめながら数多くのレギュラー番組を進行している2組。だが、当時はまだひな壇芸人。漫才やコントはもちろん、ネタの合間で積極的にボケをかまして会場の笑いをかっさらっている。

エンディングでは、ノブから「シンプルに口がくせえ」と言われた大悟が「胃が腐っとるんじゃ」と返すお馴染みのギャグも。それにかまいたちが乗っかり、パロディギャグを披露する場面がある。今も「千鳥かまいたちアワー」(日本テレビ系)や「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」(カンテレフジテレビ系)などで共演し、共にお笑いシーンを牽引している彼らの、抜群のコンビネーションをぜひ見てほしい。

ちなみにこの年のフットカットバトル優勝者は、まだ結成1年目のアインシュタイン。稲田の顔いじりを逆手に取るショート漫才で、勢いよく勝利を勝ち取った。他にも2011年の「オールザッツ漫才」は、インディアンスアキナ(当時はトリオで「ソーセージ」という名前だった)など、次のM-1優勝候補となった面々がバトルしのぎを削った傑作といえるだろう。

■笑いの宝庫が初のゴールデン進出!ネクストブレイクはだれ?

今回のゴールデン放送は事前収録となるが、配信されている過去回は深夜の生放送ということもあり、かなり自由度が高いのも魅力だ。特にCM前に流れる中継企画には、芸人たちの発想力が活かされている。

例えば、2011年は大阪マラソンの開催を記念し、千鳥や笑い飯レイザーラモンRGらがキャラクターになりきって坂を駆け下り、ちょっとしたネタを披露する『全力坂50m走』、東京オリンピックが開催された2021年は、ゆりやんレトリィバァ、守谷日和、熊元プロレス紅しょうが)らによる『笑いと平和の祭典 2021』の開催式を浅越ゴエがリポートする中継企画で番組を盛り上げた。

リミッターを外し、好き勝手に番組で暴れ回る芸人たちを深夜のテンションで眺めているだけで楽しい。普通ならばカットされるようなプチハプニングや観覧客のシビアな反応も流れるが、その嘘のない感じこそ「オールザッツ漫才」といえよう。

また、そういう場所にこそ、笑いの神様は降りてくるもの。ムーディ勝山レイザーラモンHGの「ハードゲイ」、サバンナ高橋茂雄の「犬井ヒロシ」、たむらけんじの獅子舞スタイルなだぎ武の「ディラン・マッケイ」、天津木村のエロ詩吟、とにかく明るい安村の「安心してください、はいてますよ!」など、一斉を風靡したキャラクターやネタがこの番組から誕生している。まさに“笑いの宝庫”だ。そんなお笑いファンに長年愛される「オールザッツ漫才」が、32年目にして初のゴールデン進出。

今回は「ネタバトル」がメインとなり、昨年度優勝者のヘンダーソンや、ロングコートダディニッポンの社長、白桃ピーチよぴぴ、天才ピアニストら、若手芸人計18組が1分間のショートネタでバトルを繰り広げる。ちなみに優勝者には、決勝の獲得点数(200点満点)×1万円分の賞金が用意されているという。TVerでは霜降り明星が出演芸人18組を解説するオリジナルコンテンツ霜降り明星の あなたは誰推し!?オールザッツ漫才ゴールデン大解剖SP」も配信中だ。そうした初の試みを含め、ネクストブレイクの称号を手にするのは誰になるのか見届けてほしい。

■文/苫とり子


「カーネクストpresents オールザッツ漫才 真夏のゴールデンSP」が放送される/(C)MBS


(出典 news.nicovideo.jp)