最高峰

●“くりぃむシリーズ”の魅力を初回から発揮
テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第195回は、17日に放送されたテレビ朝日系バラエティ番組『くりぃむナンタラ』(毎週日曜21:55~ ※初回1時間SP)をピックアップする。

テレ朝の深夜帯で放送されてきた“くりぃむシリーズ”の新たなブランドであり、今秋で18年目に突入。だからこそ長年の歴史で生まれてきた「ビンカン選手権」「ミニスカート陸上」など人気企画の復活が確実視され、同シリーズファンたちを喜ばせている。

初回1時間SPではSnow Manの目黒蓮と東京五輪柔道金メダリストウルフ アロンを遠隔操作するドッキリ企画「人間インストール」を放送。『くりぃむクイズ ミラクル9』と完全コラボしたスケール感も含め、期待値は高かった。

○■Snow Manのおバカ担当・目黒の快進撃

番組冒頭、始まったのは『くりぃむナンタラ』ではなく、上田晋也のMCによる『ミラクル9』だった。画面下部に大文字で「秋の新クイズSP」、画面左上に「新多答アップクイズ!お題の答え1つでも多く答えろ」と表示。画面右上の「何かがおかしい ミラクル9」という文字でかろうじて違和感に気づく程度の形式だった。

知らずに見ていた人は、「あれっ、こんな時間に『ミラクル9』が始まったの?」と思った人も多かっただろう。クイズが始まると、早速ウルフ アロンが「元素がアルファベット1文字の元素名は?」というクイズの解答を次々に答えてスタジオを驚かせる……ここでようやく新番組『くりぃむナンタラ』であることが明かされ、目黒とウルフが登場。

「苦手なクイズ番組でバンバン正解を出しまくりたい」という目黒の夢と、「オリンピックはギリギリで勝ったのでクイズで圧倒的な勝利を味わいたい。お笑い芸人より笑いを取りたい」というウルフの夢が紹介され、今回の放送は「それを叶えるための企画」であることが明かされた。もちろんこの夢は後付けであり、番組と企画のノリに合わせているだけだろう。

2人にインストールするのは、クイズ解答をクイズ巧者のカズレーザークイズ作家の日高大介トークを芸人の有田哲平と高橋茂雄。ちなみに有田は「ギックリ腰で『ミラクル9』をお休み」という設定だった。

インストールは出演者たちのスタジオ入りからスタートし、「※ここから自分の意思では一切喋りません」の文字が表示。まずは目黒を「すごい」と思わせるために同じSnow Manの佐久間大介と対戦させ、難なく圧勝した。

この結果に佐久間は「僕の知ってる目黒じゃない。初対面です」「目黒はSnow Manの中でもバカで通っている」と核心を突いたセリフで笑いを誘う。この企画は一見インストールされる目黒とウルフバラエティ対応力を試すようなムードだが、実は「周囲の出演者がどれだけ適切なリアクションできるか」を試すリトマス試験紙のような意味合いがある。その意味で佐久間バラエティ対応力を立証する形になっていた。
○■冴え渡る有田哲平インストール

実力が試されるのは、インストールする側も同じ。今回の企画で言えば、クイズはガチで解き、トークは即興で笑わせるため、カズレーザーと日高のクイズ解答力、有田と高橋のトーク力が試されていた。

前半部分のハイライトは、目黒に正解を連発させながらも、クイズ女王・宮崎美子の前に僅差で敗退したシーン。後攻で答える不利があったとは言え、敗れた日高の悔しそうな顔もこの企画の醍醐味であり、図らずもこの流れがオチにつながっていく。

さらに、笑いの部分で目黒とウルフへのインストールがハマりまくる。アメリカの州を答えるクイズウルフが「ノース・アロン・ウルフ」。正解連発の理由を聞かれた目黒が「Yahoo!ニュースとか見たら書いてある」。それにウルフが「Googleニュースとか見たら書いてある」とかぶせるなど、この企画に慣れている有田のインストールが冴え渡っていた。

後半戦も正解しまくる2人にスタジオの空気があやしくなりはじめる。トレンディエンジェル・斎藤司が「怖い。みんなで2人を倒したいくらい」、アインシュタイン・稲田直樹が「僕が言うのもなんなんですが、気持ち悪い」、日向坂46渡邉美穂が放心状態で「変な汗が……」と話したほか、“吉村ナイン10P”に対する“ウルフナイン170P”というありえない得点差がついてしまった。

番組のクライマックスは、「1stステージで負けた宮崎美子に勝てるか」だったが、目黒はクイズ女王の得意な漢字問題にあっさり正解。宮崎が不満げな顔を見せる一方、『くりぃむナンタラ』側のスタジオは大いに盛り上がっていた。

そのコントラストがこの企画の悪ふざけやバカバカしさを象徴していたが、これこそが“くりぃむシリーズ”の魅力だろう。クレーム対策や自主規制から悪ふざけとバカバカしさを抑える番組が多い中、『くりぃむナンタラ』は最高峰の1つに加わるかもしれない。

そんな悪ふざけやバカバカしさであふれる空間は、有田哲平の独壇場とも言える。どの番組よりも自ら笑いを取りに行き、何より楽しそうであり、生き生きとした姿を見せるからだ。なかでも「ときどきタカアンドトシのタカに似ている」というウルフに、「今日、トシいないからな……」「ミートパイください」と立て続けにボケさせ、「欧米か!」のツッコミを誘ったくだりは最高の意味でくだらなかった。

●顔も腕毛も面白いウルフを有効活用
クイズが終わると、ネタばらしで有田が登場したが、スタジオの解答者たちはすぐに気づかなかった。そんな中、いち早く察して「(目黒とウルフの)ボケ方とか嫌いだったわ~」と返したのは平成ノブシコブシ・吉村崇。その他のシーンでも、全力で番組に挑む姿勢を見せて、有田の「頑張ってんな~アイツ。ニセ番組なのに」というイジリを引き出し、最後も「両チーム土下座してまで勝利を目指したがカットされる」という姿をオチに使われて笑いを誘っていた。

おまけエンディングでは、有田が「(『夢を叶えてほしい』という)お願いがこの番組にきたのでやっただけですから悪いのは2人です」と責任をなすりつけ、ウルフと目黒が「どうもすいませんでした」と頭を下げたところで番組は終了。結果的に「ほとんどの出演者に見せ場を作り、終盤のCMまたぎに使える大オチ&小オチをしっかり用意する」という“くりぃむシリーズ”のハイレベルな仕事ぶりは健在だった。

もう1つ挙げておきたいのが、画面演出のうまさ。この日はクイズドッキリという企画の特性上、番組の大半で画面が2~7つ程度に分割されていたが、これが笑いの量を増やしていた。目黒とウルフ、有田らインストールする側、驚き戸惑う出演者たち。「それぞれの表情を並べて見せるだけで笑える」というシンプルさは、企画自体のすごさなのかもしれない。

番組の合間に、近日公開予定の企画として「10代女子を演じるウエダくんには騙されない」「ザ・マミィ酒井にバレずにどこまでできるか選手権」が予告されていた。新企画の中には微妙なものもあるだろうが、それも“くりぃむシリーズ”なら笑いにつなげるはず。根強い人気を持つ旧企画も含めて、今後も笑わせてくれるだろう。

おまけで1つ称えておきたいのは、ウルフ アロンを選ぶ着眼点。ウルフバラエティへの積極性だけでなく、とぼけた顔やドヤ顔、両手の濃い腕毛まで、面白いと思わせる要素に事欠かず、温厚なイメージも含めて、全世代対応型の逸材に見えた。すでに多くのバラエティに出演しているが、この日の出来が最高到達点なのかもしれない。

○■次の“贔屓”は…『おしゃれイズム』からどこが変わった?『おしゃれクリップ

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、24日に放送される日本テレビ系トーク番組『おしゃれクリップ』(毎週日曜22:00~)。

今回ピックアップした『くりぃむナンタラ』の裏番組であり、今月10日のスタートから3回目の放送を迎える。ここまでの2回では、反町隆史きゃりーぱみゅぱみゅが出演し、次回のゲスト東京オリンピック女子空手形の銀メダリスト・清水希容選手。他番組とは明らかに異なるゲストの人選であり、どんなトークになるのか興味深い。

16年半にわたって放送された全番組の『おしゃれイズム』とはどこが違い、どこを継承しているのか。MC・山崎育三郎、井桁弘恵の立ち位置なども含めてチェックしていきたい。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
(木村隆志)

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