いろいろある

 千鳥がMCを務める『チャンスの時間』がとんでもなく面白い。ABEMAプレミアムに毎月支払っている980円のうちの半分の490円はこの番組分だと言いたくなるほど今一番楽しみな番組になりつつある。

(参考:【写真】大悟が「喫煙の素晴らしさ」を伝授

 『チャンスの時間』は、クズ芸人達がクズ大喜利を競う『クズかわいい笑点』、さまざまな女性の落とし方をレクチャーしてもらう『千鳥の知らない世界』、大悟がたばこカッコよさを非喫煙者に伝授する『吸いまくり先生』、芸人が千鳥のオカズになるようなエロ漫画を描く『本気エロ漫画王決定戦』、星野源も大絶賛したアルコ&ピース平子が良好な夫婦生活を築くための秘訣を伝授する『しまくり先生』などなど取り扱う題材はエロ、酒、ギャンブルタバコ……『チャンスの時間』を観ていると、この番組のMCは千鳥以外には絶対に務まらないと断言できる。

 一歩間違えれば放送できそうにない配信ならではの企画に、千鳥をぶつけることで相殺され、そこに面白さしか残らない。例えばエロに関する女性の本音を歌にする『女の本音シリーズ』で、ゲストが下品なことを歌ったあと、ただツッコんだりイジったりするのではなく、それを遥かに超えるゲスワードでかき消すのが千鳥。例えば第104回『女の本音グランプリ』で、女子アナアイドルが放送ギリギリの“本音”を吐露し、なんともいえない空気を帯びた際にも、さらにその上を行くエロ発言でその場を制する大悟と、すかさずツッコミつつさらに話を広げるノブ。結果としてゲストは損をするどころか、下品なことを言っていたはずなのに「可愛い」とすら思ってしまう。「毒をもって毒を制す」がこれほど似合う番組はない。

 だが、千鳥の二人には圧倒的な「色気」、そしてどれほどドギツい下ネタをブチ込もうとも「千鳥なら許されてしまう」上品さがある。本当に不公平な話だが、これは本当に「そういうもの」としか言いようがない。第109回『千鳥の知らない世界』での問題「飲み会で早く帰りたいと思った時、キラキラOLはどうのようにして解散するでしょうか?」に対して大悟の放った「帰られたことねぇな、わし」が全てを表している。千鳥は相手を不快にさせない天性の才能を持っているのだ。

 そしてその一端は出演者とのちょっとしたやりとりからも見ることができる。ひとつ例を挙げると、第139回にてゲストの王林に対し大悟が「髪染めた? 王林ちゃん」と聞く場面があった。すると目を丸くしながら「染めました……今日染めたんです」と嬉しそうに驚く王林。このときの大悟のあまりにスマートな聞き方に不覚にも「カッコいい……」と思ってしまった。このときばかりは大悟が竹野内豊に見えた。矛盾した言葉なのだが「下品なのに上品」、それが千鳥の魅力なのではないだろうか。

 また112回、女芸人の苦悩を語る『雑にイジられまくり先生』にて、ヒコロヒーが今までされてきた面白くないイジりを次々と告白していった際に、大悟が「女の子の芸人にいま言ってきたイジりはしてないけど、一緒にメシ食ったときに男芸人にはネタの話するけど女芸人にはしたことない。どっかでわからんやろな、と思ってたんかもしれん。そこは反省したい」と考えを改める一面があった。この自分の間違いを認め反省する真摯さこそ千鳥がネット番組や深夜だけでなくゴールデンでも好かれる理由の一つなのではないかと思った

 しかし、時に大悟の下品さは天元を突破する。コンプラの壁をブチ壊しわれわれの心臓を一撃で貫いてくる。そして大悟の最後のブレーキを壊しているのがノブなのだと番組を観ているといつも思う。「ノブが隣にいる」それだけで大悟はアクセルをベタ踏みしているし、ノブが大悟のボケをブーストさせる。大悟が100踏んだアクセルを壊して200にするのがノブなのだ。

 楽屋挨拶に訪れたゲストたちに対し、大悟の指示を受けたノブが“嫌な奴”を演じていく『ノブの好感度を下げておこう』でその片鱗を覗くことができた。最初はただ命令に従うマリオネット的な役割かと思いきや、時に大悟をも困惑させるような言動をするノブ。第121回では「横浜でやってるラジオ番組にゲストで来てくれませんか?」とお願いするIMALUに対し、共演者の情報を聞いた瞬間、指示がないにも関わらず「出ない」と一蹴。そんなノブの悪意が見えれば見えるほどそれに呼応するかのように大悟の指示もエスカレートしていく。

 また『ノブナガなんなん?』とのコラボ企画で弘中綾香アナをターゲットに迎えると聞いたときには「弘中ちゃんには嫌われたくないねん。女子アナやで」と本音が出てしまい、大悟が「今までの子がかわいそうやん」「うちだって女子アナやんな?」とアシスタントの西澤由夏アナを指すと「もどきやん」「女子アナbot」と暴走。ヤバいのは大悟と見せかけてその上を軽々といくノブ。ここに千鳥の真髄を見た気がした。

 『チャンスの時間』を観ていると、この番組を「色んな人に知ってほしい」気持ちと同時に「誰にも見つかってほしくない」という独占欲のような感情がふつふつと沸き上がってくるのがわかる。もし偉い団体に見つかって変わってしまったらと考えるだけで辛い。これからどんなにこの番組が大きくなろうとも、どうか何も変わらず永遠にこの時間が続いてほしい、そう思ってる。(かんそう)

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(出典 news.nicovideo.jp)