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俳優業に専念するのかな。

●鉄男の情の深さに感銘「僕もそうありたい」
あす27日に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説エール』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、窪田正孝演じる主人公・古山裕一の幼なじみで盟友の村野鉄男役を演じた中村蒼を直撃。幼少期はガキ大将だった鉄男だが、のちに新聞記者を経て作詞家となり、裕一や佐藤久志(山崎育三郎)と共に“福島三羽ガラス”として故郷に錦を飾った。初の朝ドラ出演で、重要な役どころを担った中村は、1年間の完走後、俳優としてどんな景色を見たのだろうか。

「福島へ行くと、皆さんが僕のことを『鉄男さん』と呼んで温かく迎えてくださるんです」と笑顔で語る中村。福島三羽ガラスのなかでは、唯一、最後まで福島弁のなまりが強い役どころだ。「福島弁は濁点がけっこうあるのが特徴的で、微濁音の場合もあるし、微妙な違いが難しかったのですが、方言を話すと心がほっこりします」

裕一たちから“大将”と呼ばれる鉄男は、一本気で荒々しい性格だが、実は誰よりも情が深く、友達想いな男でもある。シャイで人見知りだという中村は、自身とは真逆だという鉄男役にどう向き合ったのか。中村は鉄男役について、ステレオタイプのガキ大将キャラにはしたくなかったようだ。

「“男らしい”とか“一本、筋が通っている”というのが鉄男の第一印象だと思うのですが、彼は家を飛び出し、いろいろな経験を経て新聞記者になってから登場するので、笑顔が少なくてクールキャラだけではダメだと捉えました。人に信頼される性格だからこそ、急におでん屋の屋台を任されたりもしたのかなと。だから、男らしさだけではなく、人のために行動できる優しい部分や弱い部分など、いろいろな面を見せていけたらいいなと思いました」

ただ、おでん屋を演じていた当初は「おでん屋の時期がけっこう長かったので、このまま終わってしまったらどうしようと思ったこともありました」と打ち明け、「当時は、先の台本を読めなかったし、裕一や久志のほうが先に光が当たっていったので、鉄男と同様に、僕自身もコンプレックスを感じていました」と笑う。

音楽の豊かさと家族の絆を描く『エール』だが、家族のバックグラウンドとしては、おそらく飲んだくれでDVな父親から逃げ出した鉄男の半生が一番、壮絶だったに違いない。第22週では、生き別れの弟・典男(泉澤祐希)と再会する感動のエピソードも反響が高かったが、中村自身は、家族という関係性をどう捉えたのか。

「家族については、良い思い出も悪い思い出人それぞれにあると思います。一見、簡単そうだけど、とても難しいものかなと。すごく愛し合う家族もいれば、血がつながっているからこそ、家族と呼びたくないと思っている人もいるかもしれない。一言で言い表せないぐらい複雑なのが家族かなと思います」

鉄男役を演じたことで、自身の気の持ち方にも変化があったそうだ。「鉄男は、自分が家族を捨てた冷たい人間だという罪悪感を持っていますが、裕一は『鉄男はすごく優しい人間だ』と言ってくれたし、周りの人間もそう思っている。鉄男はすごく情が深いので、僕もそうありたいなと思いました。また、僕は自分のことをネガティブに捉えがちなんですけど、鉄男のように自分ことをちゃんと受け止めてくれる人がいるのなら、そういう人たちのために頑張ろうかなと思うようになりました」

●「窪田さん主演の朝ドラに出られてよかった」

主演の窪田正孝については「本当に素晴らしい人」と心から称える。「常に自分のことよりも、誰かを引き立たせるために、自分がどう動くべきかということを考えてらっしゃる方。現場での立ち振る舞いや、現場の雰囲気作りも含め、絶妙なバランスを保たれていました」

作曲家としての才能があっても、ヘタレで弱虫キャラな裕一だが、実は窪田自身は「すごく男くさい方」だと言う中村。「男三兄弟で育ったそうで、学生時代の話を聞いていても、僕とは全然違いました。でも、僕は別のオーディションで窪田さんとお会いしたことがあるんですが、以前から男らしいイメージは持っていました」

常に華を背負ったプリンス、久志役の山崎育三郎については「育さんは、すごく紳士で、みんなに優しい。女性に優しい久志役だからそうなれたと、育さんはおっしゃっていましたが、そうとは思えないほど、普段からそういう振る舞いが身についている印象を受けました。三羽ガラスのなかでは一番年上でしたし、とても冷静で、歌やお芝居が上手なだけではなく、想いを届ける力がすごく強かったので、久志役は育さん以外には考えられなかったです」と、こちらも手放しで絶賛する。

和気あいあいとした福島三羽ガラスの共演シーンは、中村自身も楽しんだようだ。「ムードメーカーというか、常に場を和ませてくれたのは窪田さんで、いつも3人の真ん中に立ってくれていた感じがしました。僕は最初に、初めて朝ドラに出られて良かったなと思いましたが、最終的には窪田さん主演の朝ドラに出られて良かったなとつくづく感じました」

1年間、同じ役を演じ通した経験は初めてだった中村。「例えば、1カ月で終わる作品だと、瞬発的に役を見せなければいけないのですが、朝ドラだと1年掛けて、鉄男という男のいろんな部分をゆったりと見せていくことができる。また、今回は本当に多彩な人たち、音楽もお芝居もできるような怪物的な人たちと1年間一緒にやってこられたことは、今後の自信にもつながるのかなと思います」

●俳優の理想像はたけし&志村さん「存在だけで成立」

コロナ禍で一時期は撮影が中断したが、そんななかでいろいろな気付きがあったようだ。「俳優という仕事について、みなさんと話していても不安だという声を聞いたりしましたが、僕自身は充実した2カ月間でした。あまり深く考え込まずにいられたのは、家族の存在も大きかったかなと思います。ただ、『早く現場に行きたい』と思うようにはなっていきました」。

それは今までにない経験で、自分自身も驚いたという中村。「どの現場も厳しくて、そこで『用意スタート!』と言われたら、100%の力で走らないといけないし、それができなければきっと振り落とされてしまう。現場に対して、そういうプレッシャーは常にあります。でも、コロナ禍では、早くみんなと会って、一緒にお芝居をしたいと、初めて思いました。その時、自分はやっぱりこの仕事が好きなんだなと再確認した感じです」

来年の3月で30歳となる中村。役者として見据える理想像について尋ねると、ドラマ『破獄』(17)で共演経験があるビートたけしと、『エール』で作曲家・小山田耕三を演じた亡き志村けんさんの名前を挙げる。

「以前、たけしさんとご一緒した時、その人が立って台詞を言ってくださるだけで、魅入ってしまうというか、満足できるような役者さんってすごいなと思いました。今回志村さんとは、ご一緒できなかったけど、きっと志村さんもそういう存在の方だったのかなと。お芝居での間とか、表情で感動させるというよりは、その人の存在そのものだけで成立してしまう。そこは将来的な理想ですね。僕もいつかそういう役者さんになれるよう、頑張っていきたいです」

中村と志村さんの共演シーンは残念ながらなかったが、窪田から志村さんと共演時のエピソードを聞かせてもらったとか。「芸人さんだから、真面目に演技をすることが照れくさかったようで、カットがかかると、恥ずかしげに笑ってらっしゃったそうです。僕は完成した映像しか観ていませんが、やはり志村さんはすごかったですね。音楽界の重鎮として、言葉数少がなくても、座っているだけで説得力がありました」

最終週は、ひげをたくわえた晩年の鉄男役を好演した中村。「鏡で見て、変だな、似合ってないなと思いながら、恥ずかしい気持ちで演じました。でも、若い頃は必死にもがいていて、戦争も経てきた鉄男たちが、年老いてからみんなで純粋に音楽を楽しむ姿は、すごく感慨深かったです。それはきっと長く、鉄男役を演じてきたからこそ感じられたものであり、一緒に困難を乗り越えられた共演者たちだからこそ、共有できたものだったかなと。今回、本当にみなさんと一緒にやってこられて良かったし、この経験は何ものにも代えがたい大切なものだと思いました」

プロフィール
中村蒼(なかむらあおい)
1991年3月4日生まれ、福岡県出身。2006年、寺山修二原作の舞台『田園に死す』で俳優デビューし、2008年には『ひゃくはち』で映画初主演。近年の主な出演作は、ドラマ『悪魔が来りて笛を吹く』(NHK BSプレミアム)、『詐欺の子』『浮世の画家』(NHK)、映画『空飛ぶタイヤ』(18)、『もみの家』(20)など。BS時代劇『赤ひげ3』(毎週金曜20:00NHK BSプレミアムにて放送中)にて保本登役で出演中。

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(山崎伸子)

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